福島鰹 ウドンゴヤ

業務用だしの老舗「福島鰹」の新しい挑戦!

 創業100年を越えて日本の食文化を支え続ける業務用天然だしの専門店が京都にあります。8月上旬、私たちは、だしの製造卸販売をされている福島鰹の工場に、取材と見学に行ってきました。工場があるのは京都府南丹市JR吉富駅から450m。駅に降りるとすぐに鰹節のよい香りがします。その香りに引き寄せられながら線路に沿って、まっすぐ府道を歩くと到着です。

代表取締役社長の福島武彦さんと、取締役工場長の福島辰治さんが朗らかな笑顔でお出迎えしてくださり、お話を伺ってきました。


(左 福島武彦氏  右 福島辰治氏)

1. 会議室 ~おもう~

 社長「創業時から変わらず、だしの製造卸販売をしていますが、父ちゃん母ちゃんのうどん屋、蕎麦屋の時代から、ラーメン店、和食店等取引先の幅が広くなってきました。皆様も弊社のだしを、どこかで味わっていただいるかと思いますが、『福島鰹のだし』と思って、召し上がられてはいないのではないでしょうか」

確かに、言われてみればその通り。お店に行っても、「どちらのだしの銘柄ですか」と聞いたりはしません。縁の下の力持ちとして使われることが多い「だし」ですが、ビールメーカーのように広くブランド認知がされているものではないようです。

実際に営業マンがどういった思いでお仕事をされているのか伺いました。

社長「弊社としては、まず第一に、『取引先の商売繁盛に貢献したい』思いがあります。弊社には開発がおらず、営業マン自身が、お客様の料理に使うだしの素材選定や、最適な組み合わせをお客様に提案しています。京都南支店には、テストキッチンもあり、お客様と一緒にレシピを開発したり、飲食店開業の準備をする等、幅広くサポートしています。言葉でいうのは簡単ですが、努力を重ねてるんですよ。営業マンが自ら試行錯誤を重ね良い提案ができ、新しい取引が始まることも多々あります。人と人とのつながりを大切にしていて、取引先に頼っていただけていると思います」

社長のお話から、縁の下の力持ちとして、お店の味を一緒につくるひたむきな努力をされている営業マンの姿が目に浮かんできました。また、社長からも、「人をおもう」熱い情熱を感じました。


(会社100年誌を読む取材メンバ)

2. 工場 ~良さをつたえる~

 福島鰹は、和食文化が世界から注目を浴び始めた頃に海外進出をされています。海外を見据えた事業拡大に向け、いち早く衛生管理に関わるHACCPやHALAL認証を取得、国内工場の移転にも取り組まれてきました。京都に貢献でき、福島鰹で働く社員が通いやすい土地を探し、2014年、京都南丹工場が誕生しました。

早速、私たちは、京都南丹工場の作業工程を見学させていただきました!
(途中、昆布を手で丁寧にはがす社員さんを、ガラス越しに見つめてしまい、はにかませてしまいました。ごめんなさい(笑))


(工場見学の様子)

見学はまず、昆布の保管倉庫に入れていただくところから始まります。
広い倉庫のラックには、生産者、等級、産地、年度などの情報が記載された箱が積まれており、とても昆布のいい香りがしています。昆布の収穫シーズンはなんと年に一回!熟成させる倉庫では、さらに深みを増した昆布の香りがしています。社長自ら生産地に足を運ばれ、生産者の方々と話をし、昆布を厳選し仕入れます。仕入れた昆布は、一度寝かせて乾燥させます。温度管理がとても大切だそう。表面の白い粉はうまみ成分。昆布は、年月をかけると熟成をしていきます。実際に、昆布を手に熱弁くださる社長の姿が今でも目に焼き付いています。


(昆布を手に熱弁する社長)

次に、鰹節の倉庫に入らせていただきました。 昆布の倉庫からは一変。倉庫内は、がらっと「鰹節の香り」になります。
鰹節は発酵食品!知っていましたか?(製造工程で意図的に食べられる種類のカビをつけています)福島鰹では、カツオ、サバ、イワシ等の種類に関わらず、すべて鰹節と呼びます。
工場長も何度も漁場に出向き、確かな素材を選ばれています。また、素材によって、削り方を変えるなど、手間を惜しまず、丁寧に商品がつくられています。工場には、毎日、全国各地から多くの素材が届きますが、きれいに整理整頓されています。仕入れ元によって、異なるロゴの段ボールが積み重なっており、非常に目をひく光景でした。


(鰹節の種類などを工場長から学びました)

素材の良い香りに包まれながら、社長、工場長の熱い話を聞いていると、「本当にこの仕事が好きでたまらない」といった思いと、「素材にこだわっただしをお客様に届けたい」という思いが伝わってきて、感動しました。
手をかけ愛情をこめて働く生産者や工場の皆さんにも、思いを馳せることができる体験となりました。

3. ウドンゴヤ ~つながる~

 2024年1月に京都南丹工場の横に直営のうどん屋をオープンされました。
立ち上げまでの準備期間はなんと2年。

ウドンゴヤは元々数多くのお客様へうどん屋の開業支援を行う中で、社員が、だしやうどんについて、もっともっと知りたい思いから、うどん研修所をコンセプトに始まりました。
そして、お客様がお店を開業するときの研修所として、また社員向け食堂としても使われています。また、折角なので、福島鰹のだしで作ったうどんを地域の人にも味わっていただきたいという思いからうどん屋さんとしても営業しています。今では行列ができる地元の人気店です。

ウドンゴヤの店長をされている堀川さんは、総務部で事務をされていましたが、会社がうどん屋の事業を会社が始めるときに、面白そうだと運営に立候補された方です。建物もない、厨房もない、メニューもない。なにも決まっていないゼロからのチャレンジでした!

オープンにあたっては、自分たちの手で、うどん作りができるようにと近くのうどん屋で修行をされました。そして出来上がったオリジナルメニューは、並サイズでうどんが400グラムと驚きの量です!また、インスタグラムをはじめる等、様々なチャレンジをされています。今では、そのインスタグラムを見て、遠方からも多くの方が遥々来られています。


(うどん400グラム、おかかめし、ちくわ天のセット)

次はどんなアイデアや仕掛けが出てくるのか、なんだかとってもワクワクします。
福島鰹のだしを使ったウドンゴヤは、新たな取り組みにも、前向きに皆さんが一丸となって取り組まれています。これからも取引先、社員、地元ファンといった人々がつながり、未来につなぐ新たなチャレンジが生まれる場所だと感じました。今はまだ、スタート時点に立ったばかりのウドンゴヤ。福島鰹のだしを使ったうどんを広めていくことに期待したいです。

堀川店長から一言メッセージをいただきました。
「来てくださった皆さんがおなか一杯になって、『昼からも頑張るぞー』と思ってもらえたらうれしいです」と笑顔が眩しい。


(社長 ウドンゴヤの皆さん 工場長)

番外編 ~福島鰹のチャンレンジ~

4. これから ~ひろげる~

福島鰹のこれからについて、お二人にお話を伺いました。

社長「福島鰹の商品作りは、日本の食文化に根差しており、そこに携われることに感謝しかありません。『美味しい』を届けることで人を幸せにし、人を大切にする会社でありたいです。今後もその軸を変えず、丁寧に成長をしていきたいと考えています」

工場長「かつお、さば、いわし、昆布、といった素材はすべて海の幸です。海洋資源があって私たちは初めて仕事をさせて頂けますので、そのためにも漁場の改善や漁師さんに対してのフォローアップを積極的に行っていきたいと考えています」

そんなお二人は、プロの味を手軽にご家庭の食卓にも広めたいという想いもあり、「だしナビ」を始められました。「だしナビ」は、福島鰹の商品を購入できるオンラインショップで、業務用商品を一般のお客様向けに販売されています。

福島鰹のだしが、人と人をつなげて広がって、世界のスタンダードになる日も近いと予感させます。様々な素材をブレンドして作り上げる完全オリジナルのだしの世界は、私たち人間が調和する世界とよく似ているのかもしれません。私たちも、日頃はそれぞれの持ち場で仕事をしていますが、ここでの体験をきっかけに心を一つにし、互いにつながりあうことができました。もうすっかり福島鰹のファンになった私たちでした。


(カラフルなSDGs版の会社ロゴ))

番外編:お披露目 ~福島鰹の商品を使った料理 by 取材メンバ~

北濵 澄子Kiyoko Kitahama

奈良勤務。地域活性化活動では、京都に住む人、働く人、訪れる人の三方良しを目指しています。最近は、ヨガや自転車ダイエットにハマり、同時に食生活の見直しもしています。そこで早朝に祖母や母が台所でしていたように「だしを煮出す」ことを始めました。毎朝、良い香りに癒されています。